アシュアランスネットワーク技術の基本概念と実証

Last-modified: 2010-04-15 (木) 17:25:24 (2720d)

研究の概要

新世代ネットワークにおいてユーザは多様なサービス・コンテンツを利用するだけでなく、その情報量は膨大になり、かつ大きく変動する。このようなユーザからの異種でかつ変化する要求に対するディペンダビリティ、セキュリティ、適時性、適応性を満たす性質はアシュアランスと定義される。ユーザからのいかなる要求にも継続的かつ安定的に応えるトラスタブルな端末・インフラ・サービスアプリケーションを提供するためには、新世代ネットワークは、アシュアランスを満たすネットワークでなければならない。このように定義されたアシュアランスネットワークの実現には、耐故障、実時間、自律、移動、知識などの統合技術が必要とされるが、その具体的実現は挑戦的課題である。

背景と研究の目的

アシュアランスネットワークの起源は、リスポンシブシステムの提案に遡ると考えられる。多数のコンピュータをネットワークを通して有機的に結合した並列/分散システム環境では、個々のコンピュータで起こる異常がネットワーク全体に拡散して多大の損害を及ぼす状況になっていた。このような状況下では、正常処理だけでなく異常処理を含めたすべての処理に対する性能向上が強く要求され、リスポンシブシステムの研究を生むに至った。

リスポンシブシステムは、1990年テキサス大学オースティン校(現在、ドイツ・フンボルト大学)のMalek教授により提唱された概念であり、並列/分散システム環境でフォールトトレラントシステムとリアルタイムシステムの機能を統合したものと定義している。つまり、フォールトが存在しても期待される情報通信サービスをタイムリーに実行するシステムである。 Malek教授は、リスポンシブシステムの統一的な設計法を提案している。リスポンシブシステムに関する国際ワークショップが3回実施され、その中でリスポンシブシステムの設計法をマルチプロセッサシステム、ネットワークプロトコル等に適用した事例が示されている。

アシュアランスを満たすシステム、つまりアシュアランスシステムは、リスポンシブシステムを一般化したシステムと捉えることができる。アシュアランスシステムではリスポンシブシステムに組み込まれた耐故障及び実時間に関する技術だけでなく、自律、移動、知識などの技術も必要とされる。アシュアランスシステムは、システムが大規模化しても、システム環境が変動しても、セキュリティに対する攻撃が存在しても、故障を引き起こすフォールトが存在しても、期待される情報通信サービスをタイムリーに実行するシステムと定義できると考えている。

アシュアランスシステムを実現する有力な技術の一つが、東京工業大学の森教授が1977年に提唱した自律分散システム技術である。システムをサブシステムに分割した単なる分散システムではなく、サブシステムに自律性を持たせ、サブシステム間はデータのみで情報交換する分散システムである。自律分散システム技術はJRの列車制御システム、非接触型タグを用いた駅構内改札システム等に応用されている。

分散システムとネットワークにおけるアシュアランスに関する国際ワークショップADSNが2002年に設立され、毎年開催を続け、アシュアランスに関する研究は着実に進展している。2011年3月には広島において10回目の記念大会を迎える。General Chair、Vice Chairは第1回から変わらず、それぞれ森教授(東京工業大学)、角田教授(広島市立大学)が務めている。また、Program Chairは第8回はChen教授(アリゾナ州立大学)、第9回はMalek教授(フンボルト大学)が務め、第10回は石田教授(広島市立大学)が務める予定である。

本提案は、国内外のアシュアランスに関する主要な研究者が連携して国際共同研究を推進し、アシュアランスシステムに基づいてアシュアランスネットワーク技術の基本概念を確立し、統一的な設計法を提案するとともに、トラスタブルな端末・インフラ・サービスアプリケーションへの適用事例を示すことにより、その概念の有用性を実証することを目的としている。

文献

[1] Miroslaw Malek: “Responsive Systems (A Challenge for the Nineties), Proc. EUROMICRO ’90, 16th Symposium 0n Microprocessing and Microprogramming, Keynote Address, Nurunberg, 1/17, Spring-Verlag, Sept. 1990.

[2] 角田良明、菊野亨: “リスポンシブシステム,”計測と制御, vol.32, No.9, pp.750-758, 1993.

[3] Kinji Mori, “Autonomous Decentralized System and Its Strategic Approach for Research and Development,”Invited Paper, Special Issue on Autonomous Decentralized Systems Theories and Application Deployments, IEICE Transactions on Information and Systems, Vol.E-91-D, No.9, pp.2227-2232, Sept. 2008.

研究分担

幹事者…広島市立大学

課題別分担

  • 課題ア アシュアランスネットワーク技術の基本概念と統一的な設計法
    • 広島市立大学(幹事者)
    • Miroslaw Malek(海外連携者)
    • Yinong Chen(海外連携者)
  • 課題イ 見守りサービスアプリケーション
    • 広島市立大学(幹事者)
  • 課題ウ 動的にプロトコル選択可能なアーキテクチャ
    • 広島市立大学(幹事者)
  • 課題エ コミュニティネットワークアーキテクチャと技術
    • 東京工業大学(共同提案者)

研究イメージ図

研究イメージ図.jpg


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