アシュアランスネットワーク設計原理に基づいた平常時災害時両用システムの研究開発

Last-modified: 2014-03-27 (木) 22:06:20 (1335d)

新着情報

アシュアランスネットワーク設計原理に基づいた平常時災害時両用システムの研究開発

プログラム名:ICTイノベーション創出型研究開発

研究体制

研究代表者

  • 角田 良明(広島市立大学大学院情報科学研究科教授)

研究分担者

  • 伊藤篤 (株式会社KDDI研究所主幹エンジニア)
  • 石田賢治 (広島市立大学大学院情報科学研究科教授)
  • 高野知佐 (広島市立大学大学院情報科学研究科准教授)
  • 舟阪淳一 (広島市立大学大学院情報科学研究科准教授)  
  • 小畑博靖 (広島市立大学大学院情報科学研究科講師)
  • 大田知行 (広島市立大学大学院情報科学研究科准教授)
  • 井上伸二 (広島市立大学大学院情報科学研究科助教)
  • 河野英太郎(広島市立大学大学院情報科学研究科助教)

研究開発の目的

現在、スマートフォンやタブレットが普及するにつれて、ネットワークを流れるトラフィックは急激に増加している。また、Internet of Things (IoT)の時代の到来に伴い、ヒトとモノの間、モノとモノの間の情報伝送の増大も予想されている。その結果、ネットワークは巨大化し、ネットワーク上の情報の流れは予測不可能になり、かつ大きく変動するであろう。それにもかかわらず、ネットワークは今や社会・経済活動の基盤であり、ネットワークを活用したサービス提供は極めて重要と認識されており、その停止は許されない。この事実は、東日本大震災におけるネットワークの停止の影響を見れば明らかであり、将来、南海トラフ巨大地震等の発生が予想されており、これからは益々その重要性は増していく[1]。

本研究開発では、通信の混雑を軽減するための技術、災害で損壊しても自律的にネットワークを修復し通信を確保する技術を研究開発の対象とする。これらの技術は、以下で述べるアシュアランスネットワーク設計原理[2]に基づいて実現する。これまでのネットワークの耐災害性を高める技術は、ネットワーク要素の多重化により堅牢なネットワークを構築する技術がほとんどであり、想定外の故障には弱いという欠点があった。これに対し、アシュアランスネットワーク設計原理では、故障も動的な変動と捉え、ネットワーク要素がそれに適応して自律的にネットワーク構造を再構成するので、想定外の故障に対して強いという特長がある。本研究開発では、ネットワーク要素が通信混雑、災害損壊を原因とした機能障害を発生しても、その他の要素がこれらを動的変動と捉え、正常に稼動している要素でネットワークを自律的に再構築する。また、このようなネットワーク上で稼動するサービスアプリケーションは、平常時災害時のどちらにも共用できるものでなければならない。被災者がサービスアプリケーションに慣れていないと、災害時にそれを活用することができないからである。そこで、平常時にも災害時にも利用可能なサービスアプリケーションを作成し、平常時に利用していたサービスアプリケーションを災害時にも利用できるように円滑に移行する平常時災害時両用システムを構築する。従って、本研究開発では、アシュアランスネットワーク設計原理に基づいて平常時災害時両用システムの実証実験基盤を開発し、災害時においてネットワークを自律的に再構成し、平常時にも災害時にもサービスアプリケーションを継続的に提供できることを実証することを研究開発の目的とする。

アシュアランスネットワークの起源は、1990年にテキサス大学オースティン校のMiroslaw Malek教授が提唱したリスポンシブシステムに遡る。リスポンシブシステムは、並列/分散システム環境でフォールトトレラントシステムとリアルタイムシステムの機能を統合したものである。つまり、フォールトが存在しても期待されるサービスをタイムリーに実行するシステムである。リスポンシブシステムの品質は、システムに故障が起こってもシステムが要求されたサービスを指定された時間内に終了できる確率で評価できる。リスポンシブシステムの設計では、空間と時間の両者を考慮しながら、フォールトへの対処も仕様の一部として考えるリアルタイムシステムとして設計する方法を統一的な設計法として提示している。この設計原理に基づいてシステムを設計すれば、各種フォールトのクラスに対してデッドラインまでのサービスの終了が保証できる。

アシュアランスネットワークは、リスポンシブシステムを一般化したネットワークと捉えることができる。アシュアランスネットワークではリスポンシブシステムに組み込まれた耐故障及び実時間に関する技術だけでなく、自律、移動、知識などの技術も必要となる。アシュアランスネットワークは、ネットワークが大規模化しても、ユーザの要求やネットワーク環境が変動しても、セキュリティに対する攻撃が存在しても、故障を引き起こすフォールトが存在しても、期待されるサービスをタイムリーに実行するネットワークである。

独立行政法人情報通信研究機構高度通信・放送研究開発委託研究/新世代ネットワーク技術戦略の実現に向けた萌芽的研究/アシュアランスネットワーク技術の基本概念と実証に関する研究を研究代表者らは2011年度に実施した。その成果として、アシュアランスネットワークに関する統一的設計法[3],[4]を提案している。この統一的設計法では、ネットワークが変動してもネットワークを規模が同等のサブネットワークに動的に分割し続け、ネットワークに対する要求やネットワーク環境の変化への適応、セキュリティに対する攻撃および想定外の故障を引き起こすフォールトからの回復のために、各サブネットワークにリアルタイム自己組織化機能を組み込むものである。また、この成果をモバイルアドホックネットワーク等に適用した結果、様々な事例において信頼性、安全性、迅速性の観点から優れた結果を得ている[5],[6],[7]。

本研究開発では、アシュアランスネットワーク技術の確立により、多様なサービス要求・ネットワーク環境およびそれらの急激な変動、想定外の故障を引き起こすフォールト、セキュリティに対する攻撃が起こってもリアルタイムにサービスを提供できるネットワークの実現を目指すとともに、アシュアランスネットワーク技術の平常時災害時両用システムへの応用により、災害時においてネットワークを自律的に再構成し、平常時に利用できるサービスアプリケーションを災害時にも継続的に提供することを意図している。そのために、アシュアランスネットワーク設計原理に基づく実証実験基盤を構築し、その上で平常時災害時両用システムを評価する。

[1] 総務省大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会, “大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方について, ” 2011年12月28日. (http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban02_02000043.html)

[2] Yoshiaki Kakuda, "Assurance networks: concepts, technologies, and case studies," Keynote Speech & Invited Paper, Proc. Symposia and Workshops on Ubiquitous, Autonomic and Trusted Computing (UIC-ATC 2010), Second International Symposium on Multidisciplinary Emerging Networks and Systems (MENS2010), pp.311-315, October 2010.

[3] Yoshiaki Kakuda, Tomoyuki Ohta and Miroslaw Malek, "Self-Organizing Real Time Services in Mobile Ad Hoc Networks," Self-Organization in Embedded Real-Time Systems (Editors: T. H.-Toledano, U.Brinkschulte, A.Rettberg), Springer, Chapter 3, pp.55-74, 2013.

[4] 角田良明, "アシュアランスネットワーク設計方法論," 電子情報通信学会2011年ソサイエティ大会ネットワークソフトウェア特別ポスターセッションBS-8-7,pp.S134-S135, 2011年9月16日.

[5] Yoshiaki Kakuda, Tomoyuki Ohta, and Ryotaro Oda, "A methodology for real-time self-organized autonomous clustering in mobile ad hoc networks," Concurrency and Computation: Practice and Experience, Wiley, vol.24, no.16, pp.1840-1859, 2012. (http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/cpe.1792/abstract)

[6] Mario Takeuchi, Eitaro Kohno, Tomoyuki Ohta, Yoshiaki Kakuda, “Improving assurance of a sustainable route-split MANET routing through adaptable node battery exhaustion,” Telecommunication Systems Journal, Springer, to appear.

[7] Eitaro Kohno, Tomoya Okazaki, Mario Takeuchi, Tomoyuki Ohta, Yoshiaki Kakuda, Masaki Aida, “Improvement of assurance including security for wireless sensor networks using dispersed data transmission,”Journal of Computer and System Sciences, Elsevier, vol.78, no.6, pp.1703-1715, 2012. (http://dx.doi.org/10.1016/j.jcss.2011.10.018)

研究内容説明図

アシュアランスネットワーク設計原理に基づいた平常時災害時両用システムの研究開発

(研究代表者名:角田良明)

(所属研究機関名:広島市立大学)

研究開発期間:フェーズ機平成25年度

平常時災害時両用システムのイメージ図.png

平常時災害時両用システムのイメージ図

1 研究開発の目的

(1)多様なサービス要求・システム環境およびそれらの急激な変動、想定外の故障を引き起こすフォールトなどが起こってもリアルタイムにサービスを提供できるアシュアランスネットワーク技術を確立するため

(2)アシュアランスネットワーク技術の応用により、平常時および災害時に持続的かつ安定的に稼動するシステム技術を開発し、地域社会の情報活動の確保に資するため

2 研究開発の概要

(1)環境の変動が大きくかつ大規模なネットワークの情報を管理し、多様なネットワーク環境の変動に的確に適応することを評価するシミュレーション環境と実証実験基盤を構築する

(2)平常時には地域社会の口コミ情報や見守り情報を伝搬するネットワークとして、災害時には被災者の安否情報や問合せ情報を伝達するネットワークとして両用できることを実証する

3 期待される研究成果及びその社会的意義

(1)アシュアランスネットワーク技術は、平常時災害時両用システムだけでなく、動的に環境が変動する様々なシステムにも適用可能

(2)信頼性、安全性、迅速性が高く、継続的にかつ安定的に提供する携帯端末ネットワークサービスの実現

調査委員会議事録

第一回

第二回